二人乗りの自転車はどこまでも行けたのさ

取り留めないことだらだらと

【感想】D.LEAGUE 23-24 ROUND.8「Old Dancer」

Twitter(意地でもTwitterと呼び続けたい)に書きそびれちゃった感想です。今回もあまりダンスの話をしていません。

 

youtu.be「フーン」であごをしゃくってるGOさん好きです。

乾いたドラムとベースの音にTAKUMA THE GREATさんのラップ、っっっは〜〜〜〜渋くてかっこいい……グラスを傾けたくなっちゃうね、ボトル開けちゃっていいすか。

JUNさん帽子リレーのシーン、かっこよくて大好き。「それ寄越しな」みたいに帽子受け取って踊るCHIHIROさんかっけぇ…。ただ、BLUEコーナー「照明が暗くてダンスがよく見えないもどかしさ」VS REDコーナー「最小限の光でダンスのシルエットや仲間の存在を浮かび上がらせる見せ方のかっこよさ」のマッチが私の中で始まってしまう…。大体REDが勝ってたまにドローです。あえてはっきり見せきらないことのかっこよさってあるんだなぁ。

 

JUNさんのダンスもその風格もかっこよくて。若いJUNさんを再現する加賀谷さんの演技もダンスも素晴らしくて。もはや準レギュラーの奈央さんもリフトで華やかさを生んでくれて。こうした世代や経歴の異なるダンサーを迎えて作品を作れるアルトリ、その器と可能性の大きさに今回も痺れた。いろんな経験を積んだ人が来て、踊って、ときに顔すら出さず職人のように役割を果たしていくチーム。好きと興味がほんと尽きない。

 

意表を突かれたのが、この作品のテーマが「孤独」であること。

年を重ね孤独になった一人のダンサーが、写真を通して記憶の中の自分や仲間に出会い、本来の自分を取り戻していく物語 (パフォーマンス前の煽りVTRでのcalinさんのコメントより)

「おじいちゃん」でおなじみの22-23シーズンの作品「HANG OUT」の対極の作品のようにも映りました。HANG OUTは老人たちが仲間内で何と無しに集まる物語でした。

 

 

そして、楽曲のタイトルは「Solitary

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英語で孤独を意味する言葉はalone、lonely、solitaryなど複数あります。

 

類義 aloneとlonely, solitaryalone は一般には他者がいない事実を述べ, 必ずしも感情的な寂しさを意味しない. lonelyはひとりで孤独・寂しさを感じることをさす. solitary〘主に書〙 で用いられ, 仲間がなく, ひとり[ひとつ]であることを強調する語.(ウィズダム英和辞典より)

 

aloneが抱え持つ孤独には「居場所がないこと」が下地にあり、lonelyのそれには「人恋しさ」があるけど、solitaryにはそれらがありません。また、solitaryの語義には群れないことや孤独を好む意もあります。孤独への肯定的なニュアンスを含んでいるのがsolitaryです。

 

このOld Dancer (JUNさん)は、自ら仲間のもとを離れ別の道を選んだのか、仲間が自分のもとを去ってしまったのか…。いずれにせよ、かつての仲間が今はそばにいないことへの孤独を募らせたダンサーなのではと思います。仲間と踊った時間はずっと消えないけど、その思い出話を共有できる相手もいないとさびしいよね…。

 

胸をグッと掴まれたのが、JUNさんが孤独であるままラストを締め括ったこと。仲間に囲まれて踊りながら照明が徐々にJUNへ絞られて、最後はピンスポットを浴びたJUNさんのソロで終わる。孤独である自分へとちゃんと還ってくる。これは孤独を解消する物語ではなく、孤独と共にあることを受容するまでの心の旅の物語だったんだなと。

 

JUNさんに照明が絞られて、暗がりで7人は何をしていたかというと、最後までそばでJUNさんを見てたんですよね〜〜〜〜〜〜!!「記憶のなかの存在だけど、あなたのことをちゃんと見てるよ」とでも言ってくれてるみたいで、プラクティスで涙腺やられました。勘弁してくれ…

youtu.be

 

そしてパフォーマンス後のcalinさんのコメント。

 

「この思い出ひとつあれば、将来なんも悲しくない、寂しくない、孤独になんかならない。ずっと幸せでいれます。」この言葉は一つの真実じゃないかなぁと思いながらうんうん聞いていました。

突然ですが私個人の話をしますね。わたしは今30代半ばですが、子ども時代、10代、20代、30代以降と、それぞれでライフステージのように孤独ステージがあったと感じています。一人でいることが好きでも、です。寂しさで潰されそうになったとき、本やフィクションの力を借りながら孤独と向き合うことを重ねた結果、「孤独や寂しさは常にあるもので、隣人みたいなものだ」とわたしの結論が出て、孤独がそれまでのように暗く冷たく重いものではなくなっていきました。以降、わたしが孤独と健やかなお付き合いをするうえで大きく有効だったのが「思い出」です。様々な事情で関係が途絶えたり、会えなくなった人がいても、その人との確かな思い出さえあれば、存在を近くに感じられる。一緒にご飯を食べたとか、楽しくおしゃべりできたとか、そんなささやかなことも十分な思い出で。人に、思い出に生かされてるな、と思うことがこの頃はすごく多いです。

このOld Dancerも帽子を通じていつだって仲間たちを近くに感じられるから、きっと大丈夫。20年、30年後、この作品はメンバーやファンからはどんな景色に映るんだろう。思い出でありながら、未来への贈り物のような作品でした。