二人乗りの自転車はどこまでも行けたのさ

取り留めないことだらだらと

22-23シーズン アルトリ作品のテーマに関連しそうな本を紹介してみたよ

「負けませんアルトリーー!!」
calinさんの叫び声がガーデンシアターに響いたとき、アルトリが開幕戦を勝利で飾ったことへの歓びと、今季のアルトリへの期待感で胸がはち切れそうでした。

22-23シーズンも、アルトリからは期待以上の、抱えきれないほどたくさんのものを貰いました。たくさん笑ったり、興奮したり、ゾッとしたり、うっとり魅了されたり、ときに戸惑ったり、涙ぐんだり。どれだけ心も体も動かされたことか。崩れないようにギリギリの気持ちで何とか立っていた時期に、手を繋いでもらったような感覚をくれた作品もありました。

同時に、作品を通して渡されたものもあります。アルトリの意義であり作品の肝である「社会課題」です。
純粋にダンスをダンスとして楽しんで観ることもできます。でも、メンバーがダンスを磨くだけでなく、作品作りをとおして課題に向き合う過程も目にすると、受け手として私も向き合い、考えてみよう…という気持ちに自然とさせられるのです。
取っ付きやすい、共感できる、といったものに行動基準を任せず、自分からは遠い事柄であっても、そこへ思いを至らせながら理知的に生きるにはどうするのがいいだろう…と考えるようになりました。
みなさんは今季のアルトリから何を受け取りましたか?

 

この記事を書いた経緯

CSが終わってしばらく経ったある日、家の本棚をぼーっと眺めていると「あ、あの本ってあの作品のテーマと繋がるな」というのが何冊かありまして。作品と我が家の本とのつながりを発見できたことに「おっ」となったんですよね。そして「この本たちを紹介する記事を書いてみたい…」という思いがむくむく膨らんできました。

しかし専門家でも何でもないただの一般ファンが、社会課題に触れた本を紹介するとかさ…「学べや!!」って押し付けてるみたいで説教くさくない…?と躊躇があったので「需要あります?」と思い切ってTwitterで伺ったところ、嬉しいことにファンの方から反応を頂きました。よっしゃやったろ!とこの記事を書けた次第です。反応くださった皆さん、背中を押してくださりありがとうございます!

というわけで、私の本棚とKindleライブラリという狭い範囲からにはなりますが、22-23シーズンのアルトリの作品テーマ、またはその要素を含んだ本を紹介していきます。大半が紹介というより私の感想になっちゃったんですけど、そこから興味を持ってもらえたらいっか…と思い書ききりました。シーズンの半分の作品しか書けませんでしたが、どれも心からおすすめできる一冊です。

また、Twitterで伺ったときに10代らしい方からも反応を頂きました。なので、背伸びの要らない、ページが進みやすい文体の本を選んだつもりです。反応くださった方、ありがとうございます。背筋の伸びる思いでした。 

 

 

 

TGIF

 

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youtu.beファンからもDリーガーからも大大大好評を博したTGIF。開幕戦の大トリをゴキゲンにハッピーに彩ってくれました。テーマは「花金」

YouTubeでのROUND.1振り返り配信で、量さんはこの作品を作ったきっかけに「コロナ禍」があったことをお話しされていました。コロナ禍で、人が集まり飲むことがなかなかできない。楽しい飲み会や集まりができる未来がやってくるように…という想いから制作に至ったそうです。
心浮き立つ作品の背後に、そうした祈りみたいなものが込められてたとは…と意外な気持ちでした。そういえばROUND.1の時点では、まだ声援NGでしたね。(ROUND.4からマスク着用を条件に声援OKに)

「コロナ禍」、そして「花金」つまりは「花金を楽しむ人=日ごろ働く人々」という点からつながりを感じたのがこちらの本。

 

仕事本(左右社/2020)

 

2020年4月に発令された緊急事態宣言。さまざまな世代の、さまざまな職業の人たち77人の日記を集めた本です。
緊急事態宣言という状況下で、こんなにも多種多様な人たちの手記を一冊に記録した本は珍しいと思います。2020年4月を舞台にした群像劇のようでもあります。「○月△日(月)」という日付の記述にすらも、一人ひとり性格が滲み出ていて面白いです。直接は関係していなくても、私たちのすぐ隣りで日々を営む人たちに会える一冊。
タイトルこそ「"仕事"本」ですが、「仕事」はつまるところ日々の営み。緊急事態宣言下という非日常を、不安や苛立ちを抱えたまま、ときに折り合いを付けながら、何とか「生活」をした記録が綴られています。
目次を開いて、興味のある職種の人から読んでいくのもおすすめです。

みなさんは緊急事態宣言下、どう過ごしてました?

 

WIND

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youtu.beにぎやかなROUND.1とは一転、全くの別世界へと引き込んでくれたWIND。
ROUND.2のあとに自分なりに読み解きはしてみたんですが*1、今作品を見返すと当時とはまた感触が違ってきますね…。

 

この読み解きをしていたなかで、量さんのあるコメントが胸に残っていました。
こちらの投稿です。

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”全ての人々は数奇な歴史の物語を経て、今に辿り着いている”

この意図に通じるのでは…!と感じた本がこちら。

 

だれが歴史を書いてるの? 歴史をめぐる15の疑問(ピエルドメニコ・バッカラリオ、フェデリーコ・タッディア/太郎次郎社エディタス/2022

だれが歴史を書いてるの?|太郎次郎社エディタス

イタリアの作家による「歴史的な考え方」についての本です。
というと堅苦しく聞こえるけど、この本、マジですごいんです…すげぇなすごいんですよ…。何がすごいかというと、日本版監修者のあとがきに詳しく書かれてるのでちょっと抜粋しますね。
これから初めて読む方も、まずあとがきからページを捲ってみてください!

 

この本は、ひと言で言えば「歴史的な考え方」について書かれたものです。なんだか難しそうですね。そうなんです。だから、こういう本は、大学生向けに書かれることがほとんどです。それも、歴史を学ぼうとする大学生向けに。

たぶん、小学生くらいの、ほんとうに若い人たちのために、このようなことを書いた本は、まずありません。(中学生、高校生向けにだってないでしょう。)だって、難しいことをわかりやすく書くのは、すごく難しいことだから。

でも、この本はその難しいことに挑戦して、なかなかうまくいっている。高度な内容を、やさしいことばで、身近な例を使いながら、しかも、歴史に関心のない人でも、気軽に読めるように書かれている!こんな本はなかなか見つからないと思います。

「歴史に関心のない人でも、気軽に読めるように書かれている!」←ここ!ここです!この本の文章はすべて口語体で、気さくな親戚のおにいさんの話でも聞いてるような感覚で読めちゃいます。そんな語り口でありながらも、とても根源的な問いにグイグイ踏み込んでいくんです。

「人はなぜ情報を集め、知識を得るの?」
歴史学者って何してる人?」
「権力って、なに?」
「歴史ってなんでつまらないの?」←!!

私はこの本をパタンと閉じたあと、学校で歴史を習うタイミングでこの本に出会えた若い人たちが本っっっ当に羨ましくてブっ倒れそうになりました。
子どもの頃の私にとって、歴史は「学校の教科」「学問」というカテゴリーでしかなく、歴史上の人物、地名、王朝…あらゆる単語や名前はテストで答えるために暗記するだけの記号でした。
この本では「歴史とは物語である」ことを、一冊(本文は142ページと薄い本です)かけてあらゆる角度から説いてくれます。それが歴史と向き合い、歴史を読み解く際に立つゼロ地点であることを、意識の底に根付かせてくれるんです。
私には記号にしか見えなかったものたちにはすべてに物語があり、人の人生があり、血の通っていないものなんて無いのだと、視界をカッと開かせてくれました。

WINDの楽曲であるcultureの歌詞に「The culture is made by the people not the government」という一節がありますが、それをひしと感じる歴史エピソードも満載。
これから歴史を習う人、今習っている人、そうでない人にもおすすめの一冊です。

 

VALUE

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youtu.be

youtu.beすべての創作者の矜持のような想いが詩に込められていたVALUE

コンテンポラリー主体の作品を踊るのは、Dリーグで初の試みでした。

VALUE=価値 ということで、「価値づけ」についての本を紹介します。

 

批評の教室 ──チョウのように読み、ハチのように書く(北村紗衣/筑摩書房/2021)

タイトル通り、ずばり批評のやり方を一から解説した入門書です。

まず批評って何?の問いについては次のように説明されています。

『面白かった』でも『よくわからない』でもいいので、作品に触れて何か思考が動き、漠然とした感想以上のものが欲しい、もう少し深く作品を理解したいと思った時に、思考をまとめてくれるのが批評です。

 

そして、批評の果たす大きな役割として次の2つを挙げています。

  • 解釈:作品の中から一見したところではよくわからないかもしれない隠れた意味を引き出すこと
  • 価値づけ:その作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断すること

 

私はこの本を、批評するためというよりも、作品を読解して楽しむうえでの手引きとして参考にしています。読解の過程には、解釈と価値づけが関わってくるからです。対象となる作品はアルトリやDリーグに限りません。シーズン中も折りに触れて読み返していました。ちょっとその話をこれからさせてください。

まず批評をするには、何が必要でしょうか?当然ながら、作品をしっかり観る(読む)ことです。
しっかり観る(精読する)ためには、すべきことがいくつかあります。
本書に書かれている例を挙げると…

 

  1. タイトルやセリフに知らない単語があったら辞書を引く

  2. 作品内で起きている事実を正しく認定する(誤認しない)

  3. バイアスを認識するために、自分の性的な嗜好(not指向)や趣味を冷静に把握しておく

  4. 作品が生まれた文化や歴史的状況をある程度理解しておく

 

こうしたプロセスが、アルトリの作品に潜っていくうえでもすごく助けになってるんです。
1は作品の入口に立つための第一歩ですし、2では作品内でどのメンバーがいつ何をしているか、何が起きているかをちゃんと認識します。3は自他の「好み」に振り回されないためにめっちゃ大事です。4を意識すると、TGIFは背景にコロナ禍があったことや、VALUEはDリーグ向けにコンテンポラリー作品を初めて披露したという文脈があったことが見えてきます。

 

…というように、作品を読み解いたり、理解を深めたりするのに必要なプロセスが「批評」の過程にはあるんですね。
これをすると何が良いかというと、私個人の実感としては、巷のレビューやSNSに書かれている感想に寄りかからず、主体的に作品の価値を見定めようとする姿勢が身につきます。そして「受け手」としての自覚がめっちゃ育ちます。世間の評価はひとまず置いて、自分が作品を通してどんな体験ができたかにフォーカスしやすくなります。作品ならびに作り手への理解や想像も深まります。

またこれが一番、何よりの効能ですが、楽しいです!!!!!何がよかったのか、何が面白かったのか、何が気になったのか…掘って明らかにしていくのは楽しい。それを感想にまとめてシェアするのも楽しい。面倒で大変なときももちろんあるけど。私にとっては作品を自分の栄養にしていくための、出来れば確保しておきたい大切な時間です。

この本では「価値づけ」の効能について次のように書かれています。

 

価値づけというのは批評にとって地雷原に突っ込むようなものです。そんなものを考えて何が面白いのかとか、〜(中略) 作品をけなすと作者のファンから攻撃されるとか、世の中にはいろいろと価値づけをやりたくなくなる理由があります。


しかしながら、私は価値づけ、つまり作品の位置づけや質がどういうものなのかを判断する作業というのは批評の中でも楽しいプロセスだと思っています。何か作品に触れた時、面白かったとか面白くなかったとかいう感想が生じます。なぜ面白かったのか、どういうところが面白くなかったのかを考え、その根拠を明らかにして他の人と共有するのが私にとっての重要な価値づけのプロセスです。作品自体がちっとも面白くなくても、この価値づけのプロセスが面白ければ、作品から楽しみをもぎ取ることもできます。

 

もちろん、楽しみ方はひとつではないので、なんにも考えずに頭をからっぽにして楽しみたいときもあります。この楽しみの体験も素晴らしいもので、深く考えながら作品を楽しむ方とは優劣はつけられません。…ということも書かれています。ものすごく同感です。
それを踏まえたうえで、「深く考えながら楽しみたい」ときの手順を、わかりやすく解説した一冊になってます。

 

Shantay

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youtu.beジェンダーレスをテーマに掲げた作品。後のROUND.11では、対戦相手のMONOLIZがこの作品に応えるかのようにballを再現した作品*2をぶつけてくれたことも含めて、22-23シーズンではとても印象深い作品でした。

 

胸の痛みと憤りが絶えないことですが、「その人がその人らしく自由に生きる」ことを阻む障害が社会には溢れかえっており、それを取り除こうとしてもステレオタイプやら古い慣習やら政治やらのせいでずっしり重くなっちゃっててなかなか動かせないのが現実です。自分自身や誰かの人生の自由を阻まないためにも、ジェンダーを学ぶことは不可欠だと感じます。

ということで、ここではジェンダーの入門書の紹介です。

ジェンダー関連の書籍は数多くあり、扱うテーマも細分化してきています。研究者の著書もあれば、セクシュアルマイノリティ当事者の手記もある。
私は昔、セクシュアルマイノリティであることをオープンにしている人と知り合ったことがきっかけで「まずい、何も知らんぞ」と焦りジェンダー関連の本を読むようになったのですが、始めはどれから読めばよいのかわかりませんでした…。(素直に興味の引かれた本から手に取るのも全然アリとは思いますが)

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた――あなたがあなたらしくいられるための29問(一橋大学社会学佐藤文香ゼミ生一同/明石書店/2019)

よくダンス教室は「超入門」「入門」「初級」…というふうにクラス分けされてますよね。帯にもあるとおり、ジェンダーの「超入門」の本がまさにこちら。

この本はジェンダー研究のゼミに所属する学生が、ジェンダーに関する29の質問に答えていく、Q&A集の構成になっています。
29問すべて、実際に学生本人が家族や友人、知人らから投げかけられたものです。どんな問いかはこちら↓の目次から見れます。

ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた - 株式会社 明石書店

きっとみなさんにも、一度は浮かんだことのある疑問が並んでいるのではないでしょうか。日常のなかにある問いを入り口として「そもそもジェンダーとは?」「LGBTとは?」「フェミニズムとは?」という概念の基本から学べますし、さらに深い議論を聞くこともできます。
問いのなかには、裏を返せば「思い込み」のものもあります。その思い込みを抱かせている社会構造を問題化して捉え、考えるきっかけ与えてくれます。

 

何よりこの本の唯一無二の特徴は、大学生が大学生の視点で執筆したことです。ジェンダーについてこれから知り、学ぼうとしている人へ向けて、丁寧に順序立てた読みやすい文章になっています。

参考文献もたくさん載っているので、次の一冊へと橋渡しもしてくれます。

 

あとLGBTについて、基礎、法制度、市民生活、ビジネス、科学…などなど、さまざまな分野から広〜〜く概観できる一冊としてこちらもおすすめ。

図やイラストも豊富で、気になるトピックから気軽に読みやすいです。

 

 

Daydream

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youtu.beテーマは「海洋プラスチック問題」

地球規模のあまりに甚大な問題。実態を知れば知るほど、目に飛び込んでくるスケールと数字の大きさに途方に暮れます。が、日々できることをやっていくしか…!まずはプラスチック製品の消費を減らすことから。

脱プラスチック データで見る課題と解決策(日経ナショナル ジオグラフィック /2021

本書には不快な数字や絵があれこれ出てくるが、あなたを絶望させることが私の本意ではない。行動のきっかけを作ろうとしているのだ。本書はあなたのプラスチックの使い方を分析し、減らしていく方法を伝授する指南書となるだろう。

 

ナショジオなので何と言っても写真と図が豊富!パッと視覚的にわかりやすい!海洋プラスチックも含めた、プラスチックごみ問題の現状把握にぴったりの一冊です。

プラスチックの歴史、製造から廃棄までの環境への影響、問題の解決策の提案まで、幅広く網羅しています。

 

日本国内でのプラスチック海洋汚染についてはこちらが詳しいです。

 

プラスチック・フリー生活 今すぐできる小さな革命(シャンタル・プラモンドン、ジェイ・シンハ/NHK出版/2019)

本書は、プラスチック・フリー生活のガイドブックとして、生活のあらゆる場面でプラスチックを減らすための参考にしてほしい。でも、くれぐれも問題の根深さに圧倒されたり、できることの多さ─あるいは「すべき」と感じることの多さ─に途方に暮れないでほしい。なぜなら、めざすゴールは罪悪感ではないから。だれもがそれぞれの生活でできることをするしかないし、ささやかなステップはいつか必ず大きな意義あるゴールにつながるはずだ。

脱プラスチックを日常生活に取り入れるにはうってつけのガイドブック。

「これならすぐできる!」という手軽なものから「ここまでは無理や…」とたじろぐほど徹底的なレベルまで、家の中のある/家に入ってくるプラスチックを減らすためのアクションがまとめられています。個人にできることに限りはあるけど、やろうと思えばここまで減らせて、プラスチックの代替品の選択肢もこんなにあるのか!と勉強になる。

この本ではプラスチックから漏れ出す有害化学物質と、それによる人体への悪影響についてもかなり詳細に書かれています(情報量にけっこうクラクラします…)。私はこの悪影響への恐怖心から、とくにキッチン用品・食卓周りからはプラ製品をかなり減らしました。食品保存はガラス容器を使って、プラ容器は電子レンジに絶対かけない…。

生活からプラスチックを完全にゼロにはできないけど、「減らしたい」と意識すれば方法はたくさんあるよと教えてくれる一冊です。

youtu.be

design.lifull.com

「利他」とは何か(集英社/2021)

分野の異なる5人の研究者による、「利他」についての五者五様の論考集です。
「利他」をめぐる考え方に迫りながら、「利他」が持つ可能性だけでなく、負の側面や危うさも含めて考えなおす重要性に焦点を当てた本になっています。

 

みなさんも日常のなかにひそむ利他的な関係のおもしろさや奥深さ、あるいはその難しさに、目を向けていただけたらと思います。本書はあくまで出発点であり、思考の「種」にすぎません。さあ、いったいどんな利他の景色がみえてくるでしょうか。

 

見たことない「利他」の景色、この本にあります!
なかでも伊藤亜沙さんの章では「効果的利他主義」という利益を動機とする利他主義(!)について述べられてるんですが、これには私の抱いていた利他主義のイメージ(自分ではなく、他者の利益や幸福を考える)が見事ひっくり返されました。だけれども、世の中の現状や私個人の体験と照らし合わせてみても、かなり腑に落ちる考え方になっていました。「利他主義」にも多様性があることの驚き…!みなさんはどう感じるか、この章だけでもぜひ読んでみてほしいです。

 

驚いたことがもうひとつあります。

どのROUNDかは失念してしまったんですが21-22シーズンのパフォーマンス後のコメントで、淳さんが「観ている人が何を感じても、それが正解」という意のことを話されていました。何をどう感じるかを、観ている人にゆだねる。これって受け手を信頼する勇気がないと出来ないことだよな…と、このとき思ったんです。

偶然にも、利他に不可欠なものに「信頼」があると述べている箇所がありました。

 

信頼するとき、人は相手の自律性を尊重し、支配するのではなくゆだねているのです。これがないと、ついつい自分の価値観を押しつけてしまい、結果的に相手のためにならない、というすれ違いが起こる。相手の力を信じることは、利他にとって絶対的に必要なことです。

 

利他の大原則は、「自分の行為の結果はコントロールできない」ということではないかと思います。やってみて、相手が実際にどう思うかは分からない。分からないけど、それでもやってみる。…「自分の行為の結果はコントロールできない」とは、別の言い方をすれば、「見返りは期待できない」ということです。

 

アルトリと作品の受け手との関係性とも重なるのでは…?とハッとせずにいられませんでした。
私の考える、アルトリの作品の大きな特徴であり魅力は、観る人に想像をはたらかせる「余白」です。それが「わかりやすさ」からは離れ、「解釈の自由」をもたらしてくれていると思っています。偶然か必然か、その余白にこそ利他の原則がある…という見方もできる。思わぬ発見でした。

 

利他に関する本は、とくにコロナ禍以降にたくさん刊行されていて、どれも面白そうなんですよね…。土井善晴のこちらなんかも、見たことない利他の景色の匂いがする。

 

長々と拙い文章を、ここまで読んでいただきありがとうございました!

WE ARE ALT-RHYTHM!!